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第1部 ヨーロッパオーガニック食品普及協会について

ヨーロッパオーガニック食品普及協会
代表理事 田村 安



  1. 日本にオーガニック食品市場は存在するか?

    日本にオーガニック食品市場は存在しません。言葉として「オーガニック」は認識されていますが、実体は理解されていません。なぜならオーガニック認証制度がまだ存在しないからです。


  2. 認証制度とは何か?

    認証制度とは、あいまいさを排した判断基準であります。これは、生産方法がオーガニックであることを、生産者から食品加工者、輸送者に到るまで認証するものです。オーガニック製品はまず生産コストが従来農法製品よりも高くなります。なぜなら多くの労働力が必要であり、それにも関わらず単位面積あたりの生産量は低くなるからです。また病気や害虫による収穫ゼロや、収穫減というリスクを伴います。そして、ポストハーベスト農薬を使用しない、合成保存料を使用しないという点で、きちんと管理された輸送並びに保管のコストがかかります。こうした背景を消費者に理解してもらった上で、対価の支払いを要求しなくてはなりません。そのためには、そこにごまかしがあってはなりません。そこで非常に重要になるのが、オーガニック製品の信用保証であり、これを作り上げる役割を果たしているのが認証制度なのです。


  3. 現在の日本の状況

    現在の日本においては、生産者と消費者を結ぶオーガニック製品の信用保証制度がありません。 冒頭に「日本にオーガニック市場が存在しない」と述べたのはこうした理由に基づいています。では何があるのでしょうか。それは以下のような言葉の氾濫であると言えます。
  • オーガニック
  • 有機
  • 減農薬
  • 天然
  • 特別栽培
  • 無添加
  • 自然食品
  • 健康食品

ただこうした言葉が氾濫しているだけではなく、これらの言葉の定義もありません。また、販売者の意図的なあいまい表現によって消費者の混乱を招いています。現在、オーガニックの信用はインフレーションを起こしているのです。

  1. JASオーガニック認証制度

    日本においてJASオーガニック認証制度が導入されようとしています。これは既に信用が崩壊してしまった市場における信用の創造という作業であり、ゼロからの出発ではなくマイナスからの出発であるといえます。それは一朝一夕で成る容易なものでないことは明らかです。ではどうすればよいのでしょうか。見習うべき先進事例はあるのでしょうか。実はそれがEUのオーガニック認証制度なのです。


  2. EUオーガニック認証制度

    1) 歴史

    EU諸国では、第二次世界大戦後、化学農業が導入されました。しかし、1960年代以降化学農業の反省から、方々で自然回帰の行動が生まれました。ここにオーガニックマーケットの芽生えがうかがえます。ここから1970年代は民間団体が活躍する時代です。1980年になるとフランスで全世界に先駆け、農業基本法にオーガニックに関する条項が盛り込まれ、ここから国家の関与が始まり、ヨーロッパ各国別の取り組みの時代へと移ります。80年代の終わりにEU市場統合が現実のものとなり、1991年には統一指令によって国際認証基準が制定されました。ここで、オーガニックの国際マーケットが成立したわけです。ここから90年代は市場規模が拡大した時代です。1999年発行のEU農業報告書によると、EU指令が施行されてからこの約10年間の間にEU域内におけるオーガニック製品のシェアは3%にまで伸びました。

    2) EUの認証制度が日本にもたらすもの

    こうした伸びが示すものは何か。それは消費者の信頼を得、また生産者の信頼も得て、双方の要望に応えるマーケットが形成されてきた結果であるといえます。しかしながら、各国にはそれぞれの歴史があります。例えばドイツでは戦前からのビオディナミック農業(自然の摂理に則った農業方法)の流れ、フランスでは戦後の化学農業の反省から出てきた有機農業の流れなど、また北の消費国対南の生産国などといった複雑な利害調整の末、守るべきベースを整えていく必要がありました。これがEUの統合です。これは何もオーガニック製品に限ったことではありません。こうした人類史上他に例を見ない、大実験の成果を日本は学ぶべきではないでしょうか。日本の生産者、消費者、そして流通がきちんとオーガニックを理解し、その上でマーケットを形成していく、そのために私たちヨーロッパオーガニック食品普及協会は、情報収集ならびにその公開、広報活動を行っていきます。


  3. ヨーロッパオーガニック食品普及協会の活動

    1. EUオーガニック認証制度に関する資料収集、翻訳、整理
    2. 資料・パンフレットなどの制作、出版
    3. 展示即売会・講演会の企画・実施
    4. 報道機関、オピニオンリーダーに向けた広報活動
    5. 協会のホームページによる資料公開
    6. 常設店の設置を支援 (小売、レストランなど)
    7. 随時イベントの開催

事業名 事業内容 対象

EUオーガニック
データバンク

EUのオーガニック食品および、認証制度に関する資料収集・作成

オピニオンリーダー
研究者

EUオーガニック
インフォブック

EUオーガニック食品、認証制度に関する出版事業

消費者
オピニオンリーダー

EUオーガニック
コンファレンス

EUのオーガニック認証制度の講演会

オピニオンリーダー

EUオーガニックフェア

EU産オーガニック食品の展示即売会

消費者

EUオーガニックレポート

プレスリリースの発行

オピニオンリーダー

EUオーガニック
インフォサイト

ホームページの運営

不特定多数

FOODEX

食品見本市への参加

流通者
オピニオンリーダー


オーガニック農法とオーガニック農産物、食品に関する表示についての
1991年6月24日EEC理事会規定2092/91号 (1991年7月22日官報掲載)

背景

    • ヨーロッパにおけるオーガニック農産物の需要増、新市場の形成
    • オーガニック表示による販売の事実
    • 加盟国による規制、検査の実施の事実

目的

    • 生産者間の公正な競争によるオーガニック農法の保護
    • オーガニックであることの明示と消費者信頼の確立

方法

    • オーガニック農法、製品製造工程原則規定
    • 規定に基づくオーガニック表示
    • 規定遵守のための監査
第一条:規則の適用(オーガニック未加工農産物、オーガニック原料による食品)
第二条:
オーガニックの表示(各国言語)
第三条:他のEU規定との一致
第四条:定義(表示、生産、加工、販売、生産者及び輸入者、添加剤を含む原材料)
第五条:表示(オーガニック農法、第三国からのオーガニック輸入品、監査機関の表示、95%以上オーガニック原料由来、転換中製品表示など)
第六条、第七条:オーガニック生産に関する規定
第八条、第九条:監査システム 第十条:製品が監査システムによってカバーされていることの表示、違反の際の制裁処置
第十一条:第三国からの輸入
第十二条:連盟国域内での自由取り引き
第十三条、十四条、十五条、十六条:管理規定、指令の執行
付録I:オーガニック生産の定義
付録II:土壌整備、施肥、病虫害対策のため例外的に使用の認められる物質
付録III:第八、九条に記載された監査システムのもとでの最低監査要求および予防的処置
付録IV:八条一項に関する必要記載事項
付録V製品が監査システムにカバーされていることの表示
付録VI:定義、総則
リストA;非農業生産原材料として使用の認められる物質
リストB;オーガニック製品加工に使用できる補助剤、その他製品
リストC;規定2092/91五条4項により使用の認められる非オーガニック農業生産原材料


1991年オーガニック農法とオーガニック農産物、食品に関する表示についてのEEC理事会規定についての補足説明

● 信用制度を保証するのは国家であり民間ではない

    →法律によって確実に保証することが重要である
    (現場での検査・認証作業はどちらが行っても構わないが)

それは具体的には、国家による

1)明確な定義、使用許可品と不許可品のリスト公表である

この必要条件として、誰もがわかるものであること。誰もがわかるからこそ信用は生まれる。EU各国では公用語もさまざまである。この1991年規定においても第2条は各国語で「オーガニック」をどう表記するかの列挙である。

また類似のものを防ぐ手段として、他の食品表示規制との連動も図っている。例えば他の食品表示規制において「天然」とは何をもってそう表記できるのか、あるいは「自然」と表記するための条件など、厳密に定義した上でそれに基づいて許可・不許可の判断がなされるようになっている。こうして紛らわしい表示が排除されるのである。

オーガニックではないが、80年代の具体例として、醤油の表示について実際の体験では、
× Natural Brewed Soy Sauce
○ Naturally Brewed Soy Sauce

まず、上記の「天然醸造」という表記は全く認められなかった。下記の表記についても条件を厳密に規定され、製造工程等の提出や指導官との話し合いの上、注釈付きではじめて認められたのである。

2)明確な監査基準ならびに運用システムの規定
である国内消費者に対してその表示が確かなものであると保証するためには、明確な監査基準とその運用についての公表が必要である。また同時に国外に対してはその製品に対する責任を伴う。EU各国共通の明確な監査基準規定があるため、他国の製品も誰もが安心して域内流通が行われるのである。

さらに重要なことは、各国の政府、自治体などを通して、これらの規定についてわかりやすいパンフレットなど作り、

生産者・消費者双方に向けた広報活動

が確実に行われていることである。規定するだけではなく、それが広く行き渡り、誰もがわかり、知っている状態を目指す仕組みが働いている。


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